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2018年6月21日 (木)

新生児里親委託(赤ちゃん縁組)の推進について

2018年6月19日 新生児里親委託(赤ちゃん縁組)の推進について、以下のとおり、一般質問いたしました。

 民進党・県政クラブ県議団の堤かなめです。

新生児里親委託(赤ちゃん縁組)の推進について、知事にお聞きします。

昨日、福岡県警は、北九州市小倉北区の住宅で、4歳の男児優斗ちゃんを、テレビ台の引き出しに閉じ込め窒息死させたとして、27歳の父親を殺人容疑で逮捕しました。吉松議員が一般質問初日に言及されました優愛ちゃん事件をはじめ、幼い子どもが命を失う、痛ましい事件が続いています。

近年では、虐待による死亡事例がほぼ毎年50件を超え、1週間に1人の子どもが命を落としています。また、日本小児科学会によれば、虐待は見抜くのが難しいほか、医療機関、児童相談所、警察の間で虐待死と判断するかどうかの見解にずれがあるため、実際の虐待死はもっと多く、国による集計の3倍を超える可能性もあるとされています。

いずれにせよ、虐待により死亡した18歳未満の子どもの半数近くは0歳児であり、新生児里親委託は、虐待死の防止という点からも重要な施策として、全国的に取り組みが始まっています。

新生児里親委託とは、様々な事情から実の親が育てることができない子どもを、新生児段階・出産直後から里親に委託するという仕組みであり、「赤ちゃん縁組」とも呼ばれています。

2015年2月議会において、この「赤ちゃん縁組」の推進について一般質問させていただき、知事からは、「研修の実施、指針の策定、医療機関との連携体制づくりなど、その条件の整備に取り組んでいきたい」とのお答えをいただきました。

実際に、本県は、翌2016年に、「赤ちゃん縁組」のマニュアルを策定し、県内の産科医療機関とも連携してこられたと聞いています。赤ちゃん縁組は愛知県が先進県として知られていますが、都道府県がマニュアルを作って率先するのは全国でも珍しいということで新聞報道もされました。

そこで、改めて、「赤ちゃん縁組」を広げるための、この2年半の本県の取組み状況についてお聞きします。

次に、3歳未満の乳幼児の家庭養育の重要性についてです。

全ての年齢の子どもにとって家庭養育は重要ですが、とりわけ、愛着形成に最も重要な時期である3歳未満の乳幼児において、施設ではなく家庭での養育を行うことは、既に国際的な潮流です。

その背景には、「3歳までの発達は極めて重要であって、その間に、養育者と愛着関係を結び、正しい刺激が得られなければ、健常な発達が望めないことがある」などの脳科学的知見が積み上げられてきたことがあります。ちなみに、これは、「3歳までの子育ては母親がすべき」という、いわゆる「3歳児神話」ではなく、近年の研究によれば、愛着関係を築くためには、父親であれ母親であれ里親であれ、愛着対象となる養育者が少なくとも数人に固定されていることが重要であるとされています[1]

ユニセフと国連人権高等弁務官事務所は、2011年に『行動喚起:3歳未満の子どもの施設養育を終わらせよう(END PLACING CHILDREN UNDER THREE YEARS IN INSTITUTIONS; A CALL TO ACTION)』との声明を出しています。

さらに翌2012年、国連人権高等弁務官事務所は、報告書の中で「施設の環境や衛生状態が改善されたとしても、3歳未満の子どもにとっては特に、5歳から8歳未満の子どもにおいてでさえ、その悪影響の根本的な解決にはつながらない」と述べています[2]

アメリカやイギリスでは既に、3歳以下の子どもが施設で暮らすケースはほぼなくなり、ルーマニア、ブルガリア、チェコなど東ヨーロッパ諸国でも3歳未満の子どもや障がい児の家庭移行が急速に進んでいると聞いています[3]

日本においても、厚生労働省が、昨年8月に「新しい社会的養育ビジョン」を発表し、3歳未満の乳幼児については、原則として施設への新規の措置入所を停止し、概ね5年以内に、里親委託率を75%とするなどの極めて高い数値目標を掲げました。

このビジョンについては、昨年9月議会において、佐々木允議員が一般質問で取り上げ、「これらの目標は、これまでになかった数値目標であり、県行政においては、ビジョン達成に向け児童相談所を中心にさらなる体制整備や各種施策の充実が必要となる」と指摘しています。

そこで、この新ビジョンにより、日本でも、乳幼児期を最優先とする家庭養育の推進がようやく本格的に着手されたことは高く評価すべきと思いますが、知事はどのような認識をおもちなのか、あわせて本県における乳幼児期の家庭養育の現状についてお聞かせください。

 

最後に、今後の取組みについてです。

大阪府は2015年度から、福岡市は一昨年度から、新生児を含む乳幼児の一時保護について、可能なかぎり里親に委託する方針を強化し、スーパーやショッピングモールなどの身近な場所で乳幼児専任の養育里親を募集するなどの取組みを行っていると聞いています。

そこでまず、大阪府や福岡市による、このような取組みを知事はどう評価しているのか、お聞きします。

また、佐々木議員も指摘したように、3歳未満の乳幼児里親委託率を5年以内に75%とするなどの数値目標を達成するには、県内の産科医療機関だけでなく、にんしんSOSふくおかを運営する看護協会、市町村保健センターや学校などとの連携をはかる、児童養護施設の里親の募集・育成・支援などの機能を強化したり、児童相談所内に里親委託や特別養子縁組などを促進する専門の部署を設置するなどが必要となると考えますが、知事の考えをお聞きします。

以上、小川知事の、子どもたちへの愛情あふれるご答弁を期待いたします。

【知事の回答】

本県では、望まない妊娠をした女性への支援の選択肢の一つとなるよう、一昨年度から、新生児を退院直後から里親に委託する「新生児里親委託」に取り組んでいる。これまで、児童相談所職員向けに新生児里親委託マニュアルを作成するとともに、新生児里親を希望する方のために、啓発DVDを作成し、これを用いた研修を行っている。

また、平成28年7月には、「赤ちゃん縁組推進フォーラム」を開催し、広く県民の皆様への周知も行ったところである。加えて、昨年度、予期しない妊娠でお困りの方、赤ちゃんの子育てを望まれる方、これらの方を支援する関係機関向けの3種類の啓発チラシを作成し、市町村や学校、医療機関、各種相談窓口やコンビニなどに配布し、改めて周知を図ったところである。

こうした取組みにより、新生児里親委託の研修を受講した里親は、昨年度までに39世帯となり、新生児里親委託は2件成立した。

家庭は、子どもの成長・発達にとって最も自然な環境であり、特に、乳幼児期は、安定した養育環境で愛着関係の基礎をつくる大切な時期である。このため、もし家庭で養育ができない場合には、里親のような、家庭と同様の環境で育つことが、子どもの心身の健やかな成長や発達のために大変重要なことと認識している。

しかしながら、里親委託を進めるに当たっては、実親の同意を得ることが難しく、また、里親側においても、虐待などにより心身に問題を抱え、専門的なケアを必要とする子どもを受け入れる里親が不足していることから、乳児院に代えて、里親委託を早急に進めることは困難な状況にある。

こうした理由により、本県における3歳未満の里親委託率は、社会的養護が必要な子ども64名のうち、里親に委託されている子どもは6名であることから、9.4パーセントにとどまっている。なお、乳児院を退所する子どもうち、約半数が家庭へ復帰している。

国の里親委託ガイドラインによれば、新生児については、特定の大人との愛着関係の下で養育されることが子どもの心身の成長や発達には不可欠であり、今後の人格形成に多大な影響を与える時期でもあることから、委託の期間が限定される場合であっても、里親委託は有用であるとされている。これらの考え方をもとに、両自治体では、新たな里親の開拓に取り組むため、乳幼児期で、かつ短期間の里親委託を重点的に進めている。

この取り組みは、短期間であることが前提であるため、里親の負担が少なく、対象児童も乳幼児であることから、里親がより愛着を持って、子どもとの関係を築く可能性がある。里親と子どもとの相性が合えば、その後の里親委託の継続にもつながることから、里親を確保するための一つの試みとして、意義があるものと認識している。

里親委託については、平成24年度から、児童相談所に里親専任の職員を配置し、児童養護施設の里親支援専門相談員と連携しながら、里親制度説明会や研修、里親との交流会、委託後の家庭訪問などに取り組んできた。こうした中、昨年8月の「新しい社会的養育ビジョン」において、非常に高い里親委託率の目標が示され、それを達成するため、新たな「社会的養育推進計画」を策定することが求められた。

このため、県では、今年5月から、社会福祉審議会の施設入所児童権利擁護部門において、児童養護施設や児童相談所の役割・在り方など、里親支援体制の構築に向けた施策の検討を始めたところである。今後、当該部会での議論を踏まえ、国が示すこととしている都道府県計画の策定要領や自治体への支援策を注視するとともに、他の自治体の施策も参考にしながら、里親委託推進のための体制について検討してまいる。

【堤かなめからの要望】

ご答弁いただきました。「県では、先月、5月から、里親支援体制の構築に向けた施策の検討を始めた」とのことですが、最も多いゼロ歳児の虐待死を未然に防止するためにも、新生児里親委託を推進するための施策を最優先するよう、重ねて要望させていただきます。

また、実効性ある施策とするには、人員と予算の確保が不可欠であることは言うまでもありません。

 国が非常に高い里親委託率を示したこと自体は評価するものの、この高い目標を短期間にどうやって達成するかが問題であり、全国知事会なども、国に対して、きちんと財源を確保するよう求めていると聞いています。

しかし、虐待死という悲劇をこれ以上繰り返さないためには、本県として独自に、人員と予算を十分に確保していただきますよう、知事のリーダーシップを心からお願いし、私の質問を終わります。有難うございました。

 

 



[1] また、少数の特定の養育者との愛着形成を築くことは、必ずしも24時間つきっきりで過ごすということとイコールではなく、時間ではなく質が重要とされている。

[2] 3歳未満の弱い立場にある子どもの権利施設への措置を終わらせるためにThe Rights of Vulnerable Children Under The Age of Three: Ending Their Placement in Institutional Care

[3] https://www.huffingtonpost.jp/takahashi-eriko/yoiku-vision_a_23253498/ 高橋 恵里子 日本財団福祉特別事業チームリーダー

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